前回「文化」の続き。
2. 言語
二つの言葉で育つ
書かれたものを読んで理解する作業には、いろいろな力が必要となる。
語彙や文法力ももちろん必要なのだけれど、子どもが知っている背景知識が、本を読んだ時に活用できない場合、読めても理解できない、ということが起こる。
たとえば、何について書かれているかわからない文章を読んだ後、「それは衣類の洗濯についてだよ」と教えられたとしても、洗濯をしたことのない人には理解できない。また、したことがあっても、全然違うやり方で洗濯をしてきた人が読んだら、やっぱり理解できない。
日本を離れ、日本語の接触量が減ると、日本語での読みの力が遅れる。しかも、現地語は未発達なので、苦しい状況が続く。
さらに、日米共通して、小学校1~3年生までは「読むことを学ぶ」ことが教育の目標である。学習活動の中で、読む練習を行う。
しかし、小学校4年生以降は「学ぶために読む」ことへシフトしていく。
つまり、読み物から必要な情報を得て、それを元に学習を進めていく、というスタイルに変わる。これを行うにはもちろん読む力がついていなければならないが、学校ではそれが身に付いているということを前提に進められていく。
海外に住む子どもに限らず、小学校4年生を境に、読みの弱い子は学力にも影響が出始める。
読みの力を伸ばすには、本をたくさん読むことが重要である。
読み聞かせも有効。幼児だけではなく、小学校高学年から中学生でも有効である。
一人読みができるようになった場合も、一人で黙読させるだけではなく、定期的に音読をさせて内容を理解しているかどうかをチェックすることも必要である。
変な場所で区切って読んだり、読み間違えでもわからないまま読み進めるなど、音読させると日本語力をある程度推し量れる。
補習校で学ぶ子どもたちの英語と日本語の力
補習校に通う小1から中3までの子ども1600名を対象に調査。
- 5, 6歳以前に渡米
ほぼ3年後の小学校3年生ごろまでには日本語より英語が優位。 - 7~8歳頃渡米
3年くらいで英語が日本語と同じようなレベルまで追いつき、その後、英語が日本語を上回っていく。ただし、日本語と英語の差は、それ以前で渡米した子どもたちと比較するとかなり小さい。日本語力がある程度ついてから渡米しているので、日本語が維持されているようだ。 - 9~11歳頃渡米
英語の習得には時間がかかる。しかし、4年後には英語も日本語と同じようなレベルになっている。2. の子どもたちよりも日本語の維持度が高い。 - 12歳以降渡米
サンプル数が少ないので確かなことは言えないが、12歳以前に渡米した子どもに比べ、英語の習得にはかなり時間がかかる。英語が学年レベルに追いついたとしても、英語が日本語より強くなるには相当の年数がかかる。
補習校に通っていると言っても、日本語力にはかなり差がある。
日本語ができている前提で授業が進められるが、実際には学年相応の日本語力がなく、苦労している生徒も多い。
英語のサポートは現地校のELLなどがあるが、日本語の維持・向上のためのサポートはない。
補習校と親が一緒になって、言語教育を考えていかなければならない。
二つの言語の間で
子どもたち以上に、親がバイリンガル教育に関する十分な知識を得ていることが日本語教育を成功させるカギと言える。
- 教育姿勢
子どもにはプロフィシェントまで求めるか?パーシャルでもいいのか?
人間の成長は個人差が大きい。方針を定めないでフラフラすると、迷惑するのは子ども。 - 言語を習得する過程を学ぶ
9歳になる前に言語の基礎力を完成させて、抽象的な概念も入りやすくしておく。13歳までに、言語の貯蔵庫を最大限にしておくこと。
子どもがどの言語形成期にあるかを頭に入れて、適切な言語教育をすること - 会話力が高くても学習言語は伸びない
子どもとの会話ができていても安心しない。
学習をやめた途端、読み書き能力が落ちる。義務教育が終わるまでに日本語で読書する楽しみと習慣を身に付けさせる。 - 9歳の壁
補習校中退のパターンとしては「読み書き能力」不足で「9歳の壁」を乗り越えられなかったケースがほとんど。十分に会話する力があるか?日本語の基礎能力は育っているか? - 年齢相応の教材を使う
家庭学習に切り替えたとして、基礎からやり直すからと言って小学校高学年の子どもに1年生の教科書を使っても、子どもは楽しくない。年相応の知的レベルに合わせて、子どもが興味を持ちそうな教材を。楽しくなければ続かない。
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まだ続きます。
まだ続きます。
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