アメリカ西海岸、シアトルのお隣ベルビューにいます

2015/09/21

子供の心のケア - 現地校2週間 -

子供の心のケア - 戦わない子育て -
私が渡米する時、そして渡米した後もこう言われてきた。
「こどもは慣れるのが早いから」
「半年もしたら、現地の子と英語で話すようになるよ」
ある意味そうだと思う。
でも、現地校へ放り投げておけば、自動的に英語ができるようになるのか?
これはいささか楽観しすぎだと思う。

私たち親子よりも3ヶ月早く、4月に渡米されてきた方といろいろ話をさせてもらったのだけれど、彼女も同様に「自分の子供がそんなにすんなりと英語が話せるようになるとはとても思えなかった」と言っていた。
彼女には娘さんが二人いて、お姉ちゃんが私の息子と同い年で1年生。妹さんが4歳で来年キンダー。

1年生のお姉ちゃんは4月時点でキンダーで入り、現在ヒアリングはだいたいできるようになったけれど自分の言いたいことが言えないのが辛いそうだ。性格は大人しく、自分から積極的に声をかけられるタイプではないものの、現在はお友だちもできて現地校も楽しくなってきた、と語っているという。
それでもやっぱり、4月は本当に辛くて、もちろんお母さんも慣れない生活で辛く、話を聞いているだけで胸が締め付けられるようだった。
だから、私の気持ちもわかるようで、いつも私たち親子のことを気にかけてくださっている。

余談だけれど、日本人同士のコミュニケーションは精神安定のためにも必要だと私は思う。たとえ英語が上達しなくても、生きることが大事だから。
子供のいない駐在妻が心を病んでいく話を読んだけれど、自分の言葉で語ることができないストレスは例えようもないのだ。まずは自分の心を健康にすること。生きること。それに比べたら英語なんて大して重要じゃない。

私がたまにハッ!とするのは、自分のイライラをそのまま息子にぶつけてしまった時だ。
一番辛いのは、現地校で何時間も意味不明の言語を聞き続け、堪え続けている息子自身なのだ。息子のケアをできるのは家族だけであり、日中そばにいられる私だけだ。そして、それができるためにも私自身の健康も大事。

日本語補習校が始まり、息子にとってそれが思いのほか楽しかったようだった。
大人しい性格で、人前で話すなんて大の苦手なのに、自己紹介では笑いを取ったりしてたくさんお話しできたらしい(担任の先生からのメールによると)。
だからこそ、余計、いつもの現地校が辛く感じられたようだ。
いつもは「お母さんを悲しませたくない」という心理が働いて、あまり弱音を吐かない子だけれど、「学校行きたくないな…」と絞り出すように言っていた。
こういう時、なんと声を掛けたらいいのだろう。
私は「そうだよね、行きたくないよね。言っていること、全然わからないもんね…」
と返すのがやっとだった。
なるべく早くこの暗闇を抜け出せたら、と思わずにはいられない。
たとえそれが人生の中でたった数か月だとしても、心を壊すには十分の時間である。

***

中島和子先生の「バイリンガル教育の方法」という本がある。私のバイブルと言っても過言ではない。
バイリンガル教育の方法―12歳までに親と教師ができること

少し引用したい。
(p.126 「第7章 海外子女とバイリンガル教育」より)
(前略)
(現地校に入った子どもは)ある日突然学習言語ががらりと変わり、まったく分からないことばでネイティブ・スピーカーと一緒に机を並べて勉強しなければならない状況に追いやられる。この学習環境のスイッチが子どもの人間形成、知的発達に与える影響は、計り知れないものがある。
(中略)
クラスのほとんどが母語話者で、そのネイティブ・スピーカーのために作られたカリキュラムの授業に、子どもは必死でついていかなければならない。そして、その鍵となることばは皆目わからないのである。
(中略)
大人は海外に出ても「仮住まい」をすることができ、今はちょっと我慢して、日本に帰って将来役に立つこと(英語力)だけを吸収すればいいのだと思うようだが、子どもはどこにいても「本住まい」しかできない。現地校に入れば、体を通して学校文化をトータルで学んでしまうから、当然「現地人化」も進み、非日本人的反応も示すようになる
(中略)
このように、現地の学校でサバイバルのために英語を獲得することがいかにすご味のある、痛い経験であるかがよく分かる。
(後略)
他にも、海外生活を始めた年齢や経年変化などの調査結果なども盛り込まれ、とても素晴らしい本です。実際にバイリンガルがうまく進まず、ストレスで英語どころか日本語もしゃべれなくなった子供の例なども載っていて、一筋縄ではいかないことがよくわかる。
子どもの力を過信しすぎて、その狭間にいる子どもに過度の負担をかけることだけは避けたい。

2 件のコメント:

  1. たまこさん、初めまして、カリフォルニアで子育て中のcozySFlifeと申します。
    過去記事も読ませていただいて、渡米当初を思い出し、涙が出そうになりました。。。
    私の娘も小学校1年の1学期を過ごした後渡米しました。そして現地校の2年生から始まりました。
    英語が全くわからず、最初の1週間は毎朝泣いてました。
    私も泣きそうになった事も。。。
    それが、いつの間にか、「ずっとアメリカにいたい」と言うほどになりました♪
    期間限定の駐在なので帰国しなくてはいけないのは分かっていても、アメリカの現地校大好きと言うくらいなじんでしまいました。
    私も1年目は「暗闇だわ〜」と思ってましたが、いつの間にか、心配事は帰国後の日本語、日本の学校の授業に追いつけるか、になりました。
    どちらにしても心配している事に変わりはないのですが、「今いる環境が大好きで去りがたい」と思えるのは幸せな事だなぁと思います。
    たまこさんも息子さんも、今は大変かと思いますが、必ず「暗闇」から抜け出せますよ♪
    応援してます!!!

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  2. cozySFlife さん、
    コメントありがとうございます。

    私も涙が…
    今も息子は辛いようで、あまり元気がありません。
    どこかで切り替わる時期が来るだろうと期待しているんですが、今はとてもそうは思えないんです。

    だから、力強いコメントありがとうございました。
    「ずっとアメリカがいい」なんて素敵ですね。
    息子にもいつかそんな日が来ると信じています。

    cozySFlife さんの娘さんも、帰国後、スムーズに行きますように。

    たまこ拝

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