アメリカ西海岸、シアトルのお隣ベルビューにいます

2018/11/29

海外子女の海外滞在中の学校選び

JOES (海外子女教育振興財団) が刊行している「海外子女教育」10月号から、興味深かった記事についてです。
今まで読んだことがなかったんだけど、これから海外滞在予定の家族と帰国した家族、双方のサポートを行っているだけあって、いい記事がたくさんあった。
その中で、一番興味深かった記事はこちら!

海外で学校を選ぶ際の留意点

海外子女教育振興財団 教育相談員 熊谷勝仁さんのお話。

学校選択について

海外での学校には、以下のような種類がある。
  • 日本人学校
  • 現地校
  • インターナショナルスクール
  • 補習授業校
  • 私立在外教育施設
海外の学校選びでは、以下のような観点から、長期的に見通して決めることが大事である。
  • 在留期間
  • 子どもの学年
  • 子どもの資質、性格、能力
  • 現地の教育事情
  • 家庭の教育方針
一般的に、日本人学校を選択した場合は、学習適応の問題は少ないと言われている。現地校やインター校は、言語だけでなく文化の違いからも不適合を起こすケースも。保護者などの適切なサポートが必要となる。
現地校を選択した場合、言語習得にはある程度の時間が必要である。どれくらいかかるかは、以下のようなことが重要な要因と考えられている。
  • 会話力
    • 性格(外向的か内向的か)
    • 外国語への接触量(接触時間)
  • 読解力
    • お子さんの入国時の年齢
    • 母語(日本語)の読解力
◆小学校低学年で帰国する場合 → 日本人学校を選択
母語は9,10歳前後に確立するといわれる。日本語の基礎を固める大切な時期であるため。この母語の確立が、第二言語の習得につながると言われている。
二年以下の短期間の滞在の場合 → 日本人学校を選択
短期間では、現地校などで学ぶために必要な外国語を十分に習得することは難しいため。
中学校から高等学校の期間にまたがって滞在する場合
外国語の習得には4,5年かかる。進学することになる高等学校と同じ使用言語・教育システムの学校を選択する。
◆幼児期に滞在する場合
この時期に海外に在留する場合に注意しなければならない大切なことの一つに日本人としての母語の確立がある。この時期に日本語力を十分に育てておくことが必要。
母語の成長は上図の通り。
なお、4歳から8歳くらいまでの言語能力は使わないでいると消えてしまうことが知られている。この時期に現地の幼稚園などで学んだ言語は日本に帰るとあっという間に失われてしまう上、母語としての日本語も学ばないで帰国することになりかねない。
幼稚園等を選択する際は、日本語を学ぶ環境に注意する必要がある。現地校に通わせる場合は、家庭で本の読み聞かせを十分に行うなど、配慮が必要である。

感想

ここまでが熊谷先生の記事なんだけど、ここまで読んでお分かりの通り、世界中に散らばる日本人家庭に、こんなに潤沢な選択肢があるとは到底思えない。
このベルビューも恵まれている方だとは思うけど、永住家庭が全体の7割と言われているので(どうやってカウントしているのかは不明)、そもそも日本語教育の需要自体がそれほど高くないのではないかなーと思う。

結局、現地校を選択するより方法がないわけなんだけど、そうなると、この記事で言っている通り、短期滞在のお子さんの中途半端さが心配になる。
学齢期でなければ日系の幼稚園などに通わせて、ほぼ日本と同じような環境で母語を育てていくことは可能だと思うけれど、学齢期に入って「せっかくだから英語を!」と張り切って現地校に放り込んだとしても、ほとんどの場合、その言語は帰国後失われてしまううえ、日本語も補習校などでサポートしていかないと、日本の学校に戻った時に苦労することになる。苦労だけしか残らない。
(海外での貴重な経験、と言っても自分の子供のころのことに置き換えると、そんなに記憶に残っていないものである…)

ただ、記事中の参考図3つは大変参考になった。
母語の発達過程で別の言語が入った場合の影響とか考えると、恐ろしい。
私の知り合いのお子さんは、小学校低学年で英語ゼロで渡米してきて、補習校に通っていたにもかかわらず3年くらいで逆転し始め、中学生になった時点で補習校を辞めた後は、5年目の現在では日本語で会話ができない、と親御さんが嘆いていらした(この親御さんは英語堪能)。今は、がんばって日本語に力を入れているということだった。

バイリンガルは本当に加減が難しい…

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