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2017/11/05

【講演会】海外・帰国生への期待と帰国後の教育の実情 - 2

前回、帰国生向け講演会の続き。
後半からは、小澤先生の本領発揮といったところで、スライドを活用してお話してくださった。帰国子女が日本の学校に編入学する前後の話である。

2. 帰国子女教育の実情

国立大付属学校と聞くと、イメージとして「帰国子女が英語を駆使してバリバリのエリート教育」と捉えられがちなのであるが、実際には「適応教育」が主な目的となっているそうである。
つまり、日本語が極めて弱い子供たちの受け入れをしており、その子たちが日本での普通教育を受けられまでのレベルにすることが目的である。
帰国子女と言うとどうしても「英語ぺらぺら」というイメージだけが先行してしまっているが、実際には英語よりも日本語で苦労されるケースがたくさんある。日本語で教育を受けるからには、教育を受けられるレベルの日本語能力が必要である。

帰国子女受け入れ校にはユニークな取り組みをしている学校も多く、先生の事例の中で、高校生が国連会議の模擬演習をしているのを見学したことがあるそうである。
おもしろかったのが、あるグループのリーダーに「意見をまとめるために必要なことは?」と質問したところ「人の話をよく聞くことです」と返ってきた。先生が実際の国際NPOで働く職員にこの話をしたところ、「全くその通りだ」と言われたそうで、特にいろんなバックグラウンドを持つ人たちの意見をまとめるためには、とにかくよく人の話を聞くことがとても大事だそうである。
「人の話を聞く」って、簡単そうで難しいことだ。

「さまざまなバックグラウンドを持つ人の集団」ということに関しては、帰国子女受け入れ校の方が確かに経験できそうである。
アクティブ・ラーニング 問題解決型教育へ
日本では最近、従来の詰込み型から「アクディブ・ラーニング(問題解決型教育)」への移行が叫ばれてはいるのだけれど、現場は「それでいったい具体的にどうしたら」という状況だそうである。そういう教育を受けてきていない教師が、いきなりやれと言われてもそれは無理な相談である。
現在は、さらにそこから一歩進んで「深い学び」と言って、何ができるようになるかを明確化する、というより具体的な方向へ進みつつあるということであった。
帰国子女としては、そちらの方が順応しやすいかもしれない。ただ、これが日本に根付くようになるのはいつになるか皆目見当もつかない。もしかしたら根付かないまま、少子化に拍車がかかって日本が滅びるかもしれない(個人の見解です)。
いじめ
帰国子女がいじめられるのでは、という懸念があるかもしれないけれど、帰国子女へのアンケートによれば、「帰国子女が理由でいじめられた」という経験のある子女はほとんどいなかったということであった。

最近では、個人情報の問題(?)でこういったプライベートなアンケートを取るのは難しいそうであるが、思春期には帰国生でなくても多かれ少なかれいじめらしきものがあり、9割もの生徒がいじめた経験、いじめられた経験のどちらもあるという回答であった。そういう経験のある生徒に「それは帰国子女であることが原因か?」と聞くと、少なくとも小澤先生のまわりでは100%の子どもが「それは原因ではない」と答えている。
家族関係
これは100%小澤先生の私見だけれど、帰国生は家族との心理的にも物理的にも密接度が高いのではないか、ということであった。
慣れない海外で助け合いながら生活するので、家族意識が強まるからではないかということであった。また、家族関係が良好な生徒の方が成績もいいし精神的にも安定しているということである。
当然だと思う。

実際、現地校の宿題はどうしても親のサポートが必要である。
会話に不自由がなくなったとしても、学習面ではなかなか子供を独り立ちさせることは難しいだろう。さらに、親自身もその国で教育を受けていないケースが多いため、どうしても多くの時間を子供のサポートに充てる必要が出てくる。
加えて日本語補習校に通うということであれば、日本語の維持へのサポートも必要となる。また、家では母語で会話することになるので、精神的な結びつきも強くなるに違いない。
読み聞かせ
意外にも、読み聞かせの大事さについて時間を割いてお話してくださった。
なかなか時間が割けないという保護者の方も多いとは思うけれど、子どもと一緒に本を読むという行為が、思春期の子供を救うことにもつながるのだ、というお話であった。
精神的に不安定になりがちな思春期に「自分はいったい何者か」とアイデンティティをも揺らいでしまった時、小さい時に読んでもらった親の声どの言語で読み聞かせてもらったか、ということが非常に意味を持ってくるということであった。

私はアメリカに来てから、ほぼ毎日寝る前に息子に本の読み聞かせをしている。何がきっかけだったか思い出せないのだけれど、自分でも読めるけれどお母さんに読んでもらいたい、と息子に言われたような気がする。それがなんとなく習慣化している。
こんな小さな積み重ねで、将来の息子の気持ちが安定してくれるのであれば、しばらく続けていきたいと思う。
海外子女教育振興財団の説明会
財団の「帰国生のための学校説明会」もお勧めされた。
毎年、7月末から8月上旬に開催されるもので、学校のブースや帰国後の教育相談などもあって、こういうイベントに参加するのもよいのでは、ということであった。

***

この講演会の良さがあまり伝わらなかったような気もするけれど、帰国生の教育に心血を注いでこられた現場の先生のお話は大変興味深かった。
年に2回ほど、このような海外行脚をされているそうである。

ちょっと残念なのは、息子が帰国生として日本に帰るかどうか、不透明であることかな...

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