アメリカ西海岸、シアトルのお隣ベルビューにいます

2017/11/05

【講演会】海外・帰国生への期待と帰国後の教育の実情 - 1

先日、商工会主催の講演会に出席してきた。講演者のお顔を拝顔したとき、固そうな方だな…と思ったのだけれど、蓋を開けてみれば、大変話の面白い方であった。当たり前だけど、人を顔で判断してはいけない。
シアトル商工会のサイトを見たのだけれど、何も情報が乗っていなかった。基本的には商工会員のための団体だから、広く宣伝はしないのかな。

今回の講演者は

小澤一郎 外務省大臣官房人事課 子女教育相談室室長

という外務省の方である。
1974年に大学院修了した後は、ずっと学芸大附属中高の教諭をしていらして(帰国子女受け入れ校の新設などをしていらっしゃる)、2008年に退職した後、外務省におそらくヘッドハントされて2010年から室長をされている。
とにかく、その教諭人生のほぼすべてを帰国子女教育に捧げていらした方である。
外務省付きになった後も、先生のお話によると現場にもよく足を運んでいらして、生徒ともよく話をされているようであった。大変好感の持てる先生だった。
お名前が国会議員の小沢一郎氏と同じなため、先生の資料がググってもほとんど出てこないのが難点である。これで先生も何か困ったことになったことはないのだろうか。余計なお世話か。

1. 帰国子女受け入れ校

ここにすべて転記することはできないのだけれど、印象としては都心部にやはり偏っているように見えた。特に東京近辺。

国立大付属小・中・高では、ほぼ一般で入学してくる生徒との混合学級である。先生の手がけた学芸大附大泉が帰国生のみの帰国学級を持っているそうだ。
高校の場合、編入試験は一般とほぼ同じ、4月だけでなく9月編入可能な学校もあり。
他に、高専での受け入れも多く、全国51校のうち23校が受け入れ予定だそうである。
公立校に関しては、資格や入学試験の方法が様々あるが、おおむね住民であることが条件である。自治体によっては、教育委員会に相談窓口を設けているところもある。

私立も受け入れ校はたくさんある。ただ、受け入れ条件はかなり様々なので、個別に調べる必要があるだろう。寮のある中学・高校もあり、親の帰国を待たずして子供だけ先に帰国させるような場合は安心かもしれない。
海外入試を実施している学校もある。
ただ、私立の場合、宣伝もかねて帰国子女をたくさん受け入れたい、という思惑のある学校も少なくないため、帰国生の日本語サポートに関しては配慮に欠ける学校が多いそうである(想像に難くない)。英語ができる生徒がほしいが、その生徒が日本語が弱いかもしれないというところまで想像が行かないようである。面接ではふつうに日本語を話せていても、読み書きが全くダメな生徒が入学後に発覚することもある。

こちらで受け入れ校の検索ができるので、ご参考までに。
帰国子女受入校 | 海外子女教育振興財団コーポレートサイト
国際バカロレア(IB)認定校
IBは、スイスはジュネーブで設立された非営利団体である。
世界のどこにいてもIBを持っていれば、どの国のIB認定校にも編入できるプログラムとなっている。日本では、平成30年までに認定校を200校に拡大するという文科省の方針があるが、現在20校にとどまっている。目標達成は厳しいと言える(というかやる気あるのか)。
アメリカのIB校で教育を受けて、帰国後もIB校で継続して教育を受けられるのが利点ではある。
スーパーグローバルハイスクール(SGH)
SGHは、「急速にグローバル化が加速する現状を踏まえ、社会課題に対する関心と深い教養に加えコミュニケーション能力、問題解決力等の国際的素養を身に付け、将来、国際的に活躍できるグローバル・リーダーを高等学校段階から育成する」ことを目的とした文科省の事業である。民間企業や国際機関、大学などとも連携が求められる。

このSGHに認定されると、学校には1500万円の補助金が支給されるそうである。その代わり、申請にはかなりの労力を奪われるらしい。
この事業に関しては、年によってその予算が上下するため、お金のない年の認定校は少ない。わかりやすい。
個人的には「1500万ぽっち?」と驚いた。どこの先進国が教育にケチくさっているんだよ、と思った。学校にしてみたら大金ではあると思うけど。

次点として、この選考に漏れてしまったいくつかの学校を救い上げる形で「SGHアソシエイト校」なるものが登場した。こちらはSGHと理念は同じなわけであるが、国からの補助金がない。

どちらも周りの小中学校へプレゼンに出かけていくなどするので、影響は大きいようである。
大学の帰国子女受け入れ
現在の懸念材料は、2020年(現中三生が大学受験する時)にセンター試験が廃止され、「大学入学共通テスト(仮称)」に変わることである。それに向けて現在も入試傾向が少しずつ変わってきている。帰国子女入試にも影響があると見られている。
ただ、現在はまったく不透明で予測がつかない。大学入試予備校などが様々な予測を立てているので、そういう情報を頼るのも手かもしれない。

平成28年度の国公私立大学入試の帰国子女入試実施は、383大学(51.8%), 1116学部(51.4%)。受け入れるかどうかは大学と言うより、学部によるようである。
選考方法はさまざまであるが(IB, SAT, TOEFLのスコアなどに加えて高校の成績も関係する場合あり)、一番壁になるのは理系の場合、以外にも数学だそうである。日本の教育課程で学ぶ内容であるため、そもそも単語がわからない、質問の意味が分からない、ということが起こる。

IBを活用した大学入試も拡大はしているが、IBのみで入学できる学校はまだ少ない。

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資料を書き起こしただけでかなりの長文になってしまった。
「帰国子女教育の実情」は次回へ。

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