アメリカ西海岸、シアトルのお隣ベルビューにいます

2019/09/25

美しい言葉で母親に子育てを丸投げしないで

今回の内閣改造で小泉進次郎氏が環境大臣に抜擢され、彼の言動をいちいち報告されましても、と食傷気味のたまこです。

そんなことより何より、このたび文部科学大臣に就任した萩生田光一氏に関しての記事を読んでしまって、この人野放しにしてもいいの?と思った次第である。彼は加計学園問題の時にも名前が出てきた人物だし、個人的には非常に印象が悪い。

今回読んだのはこれ。ちょうど1年くらい前の記事。
各国データで見る「赤ちゃんはママがいいに決まっている」は本当か? - wezzy|ウェジー

萩生田氏の発言(2018年5月の宮崎での会合での発言)

  • (0歳児の待機児童問題は深刻だが)0歳の赤ちゃんが生後3~4カ月で赤の他人様に預けられることは本当に幸せなのか。
  • 子育てでは、親子が一緒にすごすことが本当の幸せだ。
  • 仕事や家計の不安なく育児休暇を取ることができ、職場復帰後も不当な扱いを受けることのない環境整備が必要。
  • 0歳から保育園にいかなくても、1・2歳からでも保育園に入れる枠組み作りが大事。
  • 「子育て」は大変な仕事である。子育てしている「お母さん」に寄り添う制度を。
  • 0~3歳の赤ちゃんは、はっきりとした統計はないが、ママがいいに決まっている。
  • だから、お母さんたちに負担がいくことを前提とした社会制度で底上げする必要がある。
  • 言葉の上で「男女平等参画社会だ」「男も育児だ」と言っても、子どもにとっては迷惑な話かもしれない。
  • 子どもがお母さんと一緒にいれるような環境が、必要である。
いろいろ思うところはあるけれど、1年たった今も同じような考えだとしたら、絶望しかない。もちろん、保育園の整備や育休取得問題の解決などは批判されるべき内容ではないにしても、基本姿勢はこれかよ、と思う。そもそも、産んだらすぐに職場復帰したい「お母さん」だっているわけだし、「お前は母親なんだから、少なくとも1歳まではつきっきりで育児しろよ」と国政にいる人に言われたくない。その選択権は、当然当事者である親にある。

各国データで見る「赤ちゃんはママがいいに決まっている」は本当か?の要旨

記事を読んでもらうのが一番なんだけど、簡単にまとめると以下の通り。

パパの育児は迷惑か

ノルウェーの研究より
  • 育児休暇取得の改革により、父親の育休取得率が上がり、結果的に「0歳からパパも育児」率があがった。
  • 特に母親よりも父親の学歴が高い家庭を中心に、中学校の最後に実施されるテストの結果が向上していた。
  • 子供にとって迷惑かどうかはともかく、子供の教育成果に関して言えばマイナスの影響はなく、むしろ環境によっては子供の教育成果が向上する。

赤ちゃんが他人に預けられるのは迷惑か

ノルウェーのケース
  • 1977年の改革により、乳児が母親と過ごす時間が伸びた。
  • このことにより、高等教育を受ける子供の割合が増え、30歳時の賃金も上昇した。
  • ただし、1970年代ではまだ良質な保育を提供する施設等が限定的で、現在よりも母親の育児の重要性が高かった。
ドイツのケース
  • 下記3回の育休改革が行われた。
    1979年、有給の育児休暇が2カ月から6カ月延長。
    1986年、それをさらに10カ月に。
    1992年、無給の育児休暇を18カ月から36カ月に。
  • これら3回の改革により、ノルウェー同様、母親と過ごす時間が伸びた。
  • 前2回は子供の教育成果に影響は見られなかった。3回目の最後の改革では負の影響が出た。
  • 理由は、無休期間が延びたために家計所得が減少した(教育資金が減った)こと、そもそも1歳半以降は他人との接触が必要にもかかわらず、母親がひとりで丸抱えしたこと、などが考えられる。
デンマークやスウェーデンでの研究にも同様の結果が見られた。
  • スウェーデンの研究では、全体的には育休延長により、子供の教育成果に効果はなかったが、母親が高学歴に限れば効果があった。
  • 日本でも教育水準の低い母親の子供ほど保育園の効果が高いことを示した研究がある。
  • 裏を返せば、子供の教育成果という観点では、困難な状況にある母親に育児の負担までかけると、子供にとって幸福とは言い切れないかもしれない。
  • 母親の育児に変わる、良質な保育が提供されれば、子供の教育成果という点においては、「赤ちゃんが他人に預けられて不幸になる」ということはなさそうだ。

畠山先生の記事のまとめ

  • 教育的観点から見ると、もし本当に赤ちゃんが他人に預けられて不幸になるのだとしたら、保育や育児を巡る社会環境が不幸にさせている可能性がある。
  • 政治家がこうした発言をすることは、政治家である自分達のこれまでの過失を認めているようなものである。
  • 日本では、重要な法案の根拠となる調査自体に問題があったり、その政治家の思い込みで意見がなされたり、重要な社会問題の解決が根拠なしに決められたりしているようにみえる。特に、ジェンダーや教育分野において。
畠山先生は、いつもハッとする切り口を提供してくださるので、どの記事もとても興味深い。萩生田氏の発言は感情的にイラっとするわけだけれど、こうやって根拠を示してくれると、ただの感情論にならないので落ち着いて聞けていいですね。
正直言って、日本の閣僚は私よりだいぶ年上のおじさんばっかりだし、世代がもうふたまわりくらい若返らないと政治の意識改革ってできないかもしれない。

私の感想

少子化対策もこんなことだから進まないんだろうな、と思う。
日本は自然災害も多いし、地震や豪雨などで土地が削られて、さらに人口が減少したら、国として存続できるの?と不安になってしまった。

かたやアメリカは近年下がりつつあるけれど、だいたい人口維持ができるとされる出生率2.1あたりをうろうろしていた(2016年で1.82.日本は同年1.44)。
子供をめぐる環境も、日本より過酷に見える(公的資金の投入された保育園はないし、公立校の予算は少ないし、大学~大学院まで進学するとなると、授業料もかなり高額である等々)。それでも先進国の中では割と高い方を維持しており、そのからくりが知りたい。ここまでくると、国民性みたいなものなのかもしれないな、とも思う。暮らしてみるとわかるけれど、子連れが肩身の狭い思いをすることは少ないから。
関連記事) 乳幼児のベビーシッティングをして気づいたこと

日本の育児や子供にまつわる話を聞くと、どんどん絶望的な気持ちになる。日本人はもっと怒ってもいいんじゃないだろうか。怒ること自体もできないように、DNAレベルで刷り込まれているのかもな…

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