アメリカ西海岸、シアトルのお隣ベルビューにいます

2016/03/02

アメリカの義務教育とそのカリキュラムこぼれ話

ベルビュー学区のことを月一で日本語で説明してくださるボランティアの方々がいらっしゃいます。
Bell J Coffee Talk ベルJコーヒートーク

特に興味のないテーマでも、行ってみると雑談から新しい情報を得られたりするので、時間があるときにはなるべく参加するようにしている。
今回のテーマは「小学生に関係するテストについて」だった。
想像以上に興味深かった。特に雑談の部分がよかった。

一昨年以前10年以上続いていたらしい [Math Placement Test] は、5年生全員がテスト対象だった。目的は Middle 進学時の数学クラス決定のためだった。
このテストがなぜ必要だったかというと、5年生と6年生の数学の内容にオーバーラップする部分が多く、学習する必要のない生徒が飛び級するためのテストだったそうなのだ。
ところが、6年生のカリキュラムが変更され、5年生と6年生の内容にオーバーラップする部分が少なくなり、このテストの意味がなくなり、昨年、ベルビュー学区がこのテストを廃止する方針を出した。

これに予想以上の反論をしたのがTiger momたちであった。
学区に説明会を開いて説明しろ、と詰め寄ったらしい。
お兄ちゃんお姉ちゃんが飛び級したのに一番下が飛び級できないのは不公平だとか、飛び級できないなんて恥ずかしいとか、理由はとにかくすさまじく。
この気迫に負けて(?)、学区は希望者は受けても構わないよ、と方針を切り替えた。
今のところ、このテストが今年も希望者に実施するかはわかっていない。

彼らは飛び級のために家庭教師を雇ったりして、飛び級を勝ち取り続けていたそうなのだが、結局、その付け焼刃は進学してから子供の学力に出てしまい、途中で壁にぶち当たっていく子も少なくなかったそうだ。
(そりゃそうだろう。)

で、そもそも、なぜ、5年生と6年生のカリキュラムがオーバーラップしてしまったのか。
「アメリカ的」と表現されていたんだけど、義務教育全体でカリキュラムを決めるのではなく、ある時突然、神のお告げのごとく「7~9年生のカリキュラムは、これを採用します」とお達しがあるのだそうだ。
ある特定の学年だけがカリキュラムを変更するので、それ以外の学年とのカリキュラムの連続性が断ち切られてしまうことも多い。
前後でカリキュラムの変更があったにも関わらず、つい最近まで古いカリキュラムのまま6年生だけが取り残されてしまったおかげで、5年生とオーバーラップしてしまい、結果できたテストだったのである。

さらに言うと、これはベルビュー学区だけに採用されたカリキュラムであるので、同じ州でも学区が異なれば違うカリキュラムを採用しているため、他学区からの転入生は全くことなるカリキュラムを強いられることになる。
そういう転入生のレベルなども計るためにテストがあったり、サポートプログラムがあったりするわけだ。

なんだろう、この無駄な感じ…

でもなんていうか、日本なんかとは違って、よく言えば柔軟性があって、そのしなやかさが強みなのかもしれないなと思ったりした。
それだけいい加減なカリキュラムでも、12年生までに大学で学べる学力がついて、たくさんの優秀な社会人を輩出しているわけで、逆にすごいなーと感心した。

***

他に、小学校で受けるはずのテストをいくつかピックアップ。

STAR Test
http://wa.portal.airast.org/students-and-families/
[概要]
3年生以上対象、秋、冬、春の年3回実施。
テスト形式はコンピュータ。Reading, Math で 45分。
テスト勉強は必要なし。
成績にあるわけではなく、あくまで生徒の現状を把握するためのテスト。
問題は各人の前年の成績、前問の正誤によって変化する。
全員が同じ問題を解くわけではない。
したがって、どのレベルの子でも判定できるようになっている。
難しい問題ができる子はどこまで難しい問題が解けるか判定できるし、全然できない子はどこまでできないかがわかる。
[目的・用途]
クラスでの授業は、日本のように全員が先生の話を聞くスタイルのものだけでなく、習熟度に合わせてグループ分けをして、そのグループで作業をすることも多い。先生にとっても指標になる。
(グループで作業するので、保護者などのボランティアが必要になるようだ。各グループに目が届くように。納得。)
その他、Gifted招待者、ELL生徒の習熟度など。

Smarter Balanced Assessments
http://www.smarterbalanced.org/assessments/sample-questions/
[概要]
3~8年生および10, 11年生対象。学年によって異なるが、3~5月に行われる。
テスト形式はオンラインのみ。
他州でも同じテストをするので比較できる。
4段階評価され、3, 4が合格。
子供の学力が学校内や学区、州の中でどのくらいのレベルにいるか把握できる。
事前にサンプル問題で慣れておくとよい。
http://www.k12.wa.us/mathematics/assessment.aspx
[目的・用途]
個人の成績には影響しない。
各学校で合格者率の達成目標があり、先生方は自分の評価にもつながるため真剣である。
(学校の評価が決まり、土地の値段も左右する。)

ELPA21
http://wa.portal.airast.org/training-tests/
[概要]
ELL生徒対象。
2~3月に授業内で実施。
Transitional と評価されると、ELL卒業。
テスト形式はコンピュータおよびSpeaking & Listening.
次年度のESLステータスが決まる。
息子が現在の英語力で ELPA を受けたら、来年も Beginner のままな気がする…

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