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2019/10/22

IDEA と Section 504 - 教育差別をなくすための法律 -

最近、"Section 504" という教育プログラムがある、という話を聞いた。調べてみたら、BSDのWebサイトに載っていた。
Section 504 – Bellevue School District

Special Education

BSDのWebサイトの "Services" は、日本にはないような教育プログラムがたくさん盛り込まれていて、時間がある時に読むと、わりと面白いです。
ELLやギフテッドと言ったいつものプログラムのほかに、養子縁組の家庭へのサポートとか、住所不定の家庭もしくは子供向けサービスなどもある。もちろん障碍者用プログラムも含まれている。

何らかの事情で学校へなかなか行けない子供たちのために

今回取り上げるのは、このなかの "Section 504" というプログラムである。
カテゴリーとしては障碍者プログラムに近いのだけれど、実際には「障碍」とならないケースについても広くカバーされている。持病(ぜんそくなど)があって、なかなか学校に来られないようなケースも想定されている。

BSD では、連絡あり/なしにかかわらず、年間20日以上の欠席で不登校 (truancy) として裁判所に申し立てする可能性があるそうである。
Attendance – Bellevue School District
こういったことを回避するためにも、何らかの事情で学校へ通えない生徒は、 Section 504 の申請を考えた方がいいということである。

学校に通えなくても教育は受けられる

まず、前提条件として IDEA (Individuals with Disabilities Education Act) について知っておく必要がある。日本語では、障害(障碍)者教育法、個別障害者教育法と訳され、すべての障害児は、無償で公教育を受ける権利がある、それを保証する法律である。
IDEA が規定している「障害」には、視覚・聴覚・言語・四肢、学習障害などが含まれる。

Section 504 というのは、障碍児に対して、障碍のない子供たちと同じように教育を受けさせる、差別を禁じる法律である。また、障碍児自身も、単に障碍を理由として教育プログラムを拒否することはできない。
IDEA と何が違うのか、というところだけれど、Section 504 は、IDEA が教育の対象としている障碍以外を保有している生徒の権利を守る役割を果たしている。たとえば、病弱であまり学校に通えないとか、ADHD などで知能には全く問題ないが、集団活動に支障をきたしたりするような場合などである。

IDEA を元とした特殊教育に認定されなかった場合、この Section 504 に当たるかが検討される。
あとの認定の流れは、冒頭のBSDページのリンク先にある通りである。
たいていは学校側が保護者に連絡し、Section 504 についての説明があり、リクエストを保護者に促す。これが認められると、Section 504 の保護下に入り、特別な学習プログラムを受けられるようになる。

欠席には厳しい

日本の場合は、不登校になると放置されてしまうことがほとんど。

不登校でなくても、ふだんはインターナショナルスクールに通うけれど、地元の公立校にも在籍している、みたいな人もいたりする。息子が渡米前に通っていた世田谷区はこういったダブルスクールは認めていないんだけど、自治体によってはそれを認めていて、あと一人いればクラスを分けられる(1クラスの人数が少なくなる)から在籍だけしてほしい、ということもできてしまうようである(という話を聞いたことがある)。
その点、アメリカは虐待などの可能性を考慮して、出欠席はわりと厳しく、法で定める欠席日数を超えると裁判所に申し立てされてしまう。

そういうことも考慮しての、Special Education である。
さまざまなバックグラウンドの生徒に配慮して、すべての子供が学校以外の選択肢も含めて教育を受けられることを目標に掲げていること、そもそも「学校以外」の可能性を前提として考えられていることに、アメリカの懐の深さを見たような気がした。
そうは言っても、そもそも有史以来、移民との闘いを強いられてきたアメリカでは、そういった考えが成熟していったのも無理からぬことだったんだろうなとは思います。
関連記事)現地校にも新年度には提出書類が

「学校に通う」以外の選択肢

余談ですが、数ある学習環境の選択肢のうちの「ホームスクーリング」についての記事があったので、リンクしておきます。
不登校児に「学校なんて行かなくていい」とは言い切れない? ホームスクーリング(家庭教育)の現状 - wezzy|ウェジー

日本はほぼ単一民族なので、「学校一択」でも全然問題なかったんだなーと改めて。
逆に、学校に行けない子供が社会からもドロップアウトしてしまうことが問題で、そういう子も楽しく生きられる社会になったら、もっと社会全体がハッピーになるだろうなーと思います。

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