アメリカ西海岸、シアトルのお隣ベルビューにいます

2019/10/12

"キコクシジョ" はまだ珍しいのか

前から書こう書こうと思っていたんだけれど、なかなか筆(キーボード?)が進まず。
"キコクシジョ"である。

お前はアメリカ人だ

きっかけは、この記事を目にしてしまったことから。
News Up “キコク”はしたけれど | NHKニュース

いじめに関しては、近年、個人情報保護法(?)の影響なのか調査できなくなったらしく(確か)、あまり統計データがない。
さらに帰国子女に限った調査となると、ぜんぜんない。だから、この記事のような話がよくあることなのか、特殊なケースだったのか、それはよくわからない。場所柄や年齢的なこともあるかもしれない。

ただ、この手の話がなくならないところをみると、おそらく多かれ少なかれ、今でもあるのだろう。
「キコクシジョ」が、ある種の人間には、妬みや嫉みの対象となりうるし、理由なしに嫌悪感を持つことがあるのだ、ということがよくわかる。

私の中学生時代にも、イギリスからの帰国子女が入ってきたことがあって、私は別のクラスだったにもかかわらず、話題に上ったことをよく覚えている。
「英語の先生と英語で会話していた」
(その先生は、当時は珍しく、きれいなアメリカ英語を話し、英会話できる相手ができたのが嬉しそうだった)
「英語できるからって生意気」
噂だけが独り歩きして、「どうやらとても嫌な女らしい」みたいなイメージを持ってしまった。でもほぼ「英語ができる」のが理由だった。

子供の世界は狭い。とても狭い。
彼らは大人が考えるよりずっと保守的である。
いじめが起こってしまうのは、やはりそれは大人が悪いだろうと思う。いじめをしない人間を育成するのは大人の役割である。その大人が「帰国子女だから本当の日本人じゃない」とか「英語しゃべれるからって鼻にかけやがって」とか言い出したら、子供の世界からもその思想はなくならない。

記事の中の飯田さんは「学校も慣れていなくてどう扱ったらいいかわからなかったのではないか」と大人な発言をしていたけれど、扱う扱わない以前に、ふつうにいじめられている生徒を目の前にして、どうにかしようとは思わなかったのか?帰国子女だと、いじめられていても「特殊な子供だからどうしたらいいかわからない」となってしまうの?同じ人間なのに?
担任も、たぶん、単純に面倒くさかったんだろうなーと思う。飯田さんが転校してくれて、正直ほっとしたんじゃないだろうか。

アメリカに帰れ

関連記事のこれも、胸が詰まる。
News Up わかってあげられなくてごめんね | NHKニュース

帰国子女が「アメリカに帰れ」と言われるとか、外国にルーツを持つ子供がその見た目だけでいじめられるとか、ただでさえ災害が多くて沈没しそうな国なのに、本当に滅ぶよ、と思う。

純粋に日本に生まれて日本人家庭で育った日本人の子供でも、空気を読まなかったり周囲になじめなかったりする子はいる。でも、帰国子女やハーフの子は「こいつらは日本人じゃないから空気が読めない」と、彼らのバックグラウンドに理由づけられてしまう。

以前、パックンことパトリック・ハーランさんが
「日本語を覚えたては日本人はみんな優しくていろいろ教えてくれて」
「でも、ある程度日本語で会話できるようになると、途端に『日本人』と同じようなふるまいを求めてくる」
みたいなことをテレビで言っていたことがあった。確か、日本語堪能な外国人タレントか何かの番組だったので、周りにいたタレントさんも「そうそう!」と力強くうなずいていた。

そういう空気はなんとなく、わかる。
一定の日本人としてのクオリティに達していないと、「だから外国人は」みたいに言われてしまう。
日本人の大好きな減点評価方式。

当たり前だけど、帰国子女も様々なタイプがいるのです

ドラマ「逃げ恥」の帰国子女観が現実的で新鮮です~どこでもマイノリティー~ - ことりのかけら
堀内 柚: すぐ言われるんです。あの子は帰国子女だから変わってるって。それで文句言うと、「嫌ならアメリカ帰れ。」って。向こうにいた頃は、「日本人は、日本に帰れ。」って言われてました。
成田 凌(百合の部下): どっちにいっても「マイノリティー」か。
堀内 柚: 二か国語できるって言っても英語は南部なまりだし、日本語は文章書くの苦手だし。
こんな風に、さらっとでもドラマ等で取り上げてくれたら、少しは認識が変わってくるかもしれない。サブリミナル効果みたいなもので、いろんなドラマにちょこちょこ帰国子女が出てきたらいい。

帰国子女にあるイメージのように、子供はみんな「自然に」「自動的に」英語を習得したわけではなく、そこにはたくさんの努力や涙があったはずだ。さらに、英語の獲得とともに「日本語が失われてしまうかもしれない」ということは全然知られていない。
たとえ、本人の努力で日本語も英語も高いレベルを保持していたとしても、それが「当たり前」と取られてしまう。
英語にコンプレックスを抱えていたり、自分の日本語に自信を持てない帰国子女も多い。ここに出てきた柚のように「隠れ帰国子女」を選ぶ人も多い。

英語ができる/できない、どちらに振れても、周りから勝手に妬まれたり失望されたりしたら、帰国子女の行き場がない。
日本語ができない日本人を、日本人として認めてもらえないような偏見もある。そもそも誰かに認めてもらうようなものじゃないけど。
テニスの大坂なおみ選手が自身のアイデンティティについて聞かれた時に「私は私でしかない」と答えたのは記憶に新しい。

もちろん、たいていのお子さんは、帰国後、学校に行けなくなってしまうほどのトラブルに遭うこともなく、なんとか順応していくのだと思う。ただ、個人の心の中では様々な葛藤があるかもしれない。ちょっとしたことで傷つくこともありうる。「英語しゃべって」攻撃とか、「アメリカ人」とからかわれるとか。

最近、頻繁に彼女のブログへのリンクを貼ってしまってアレなんだけど、Boi さんのこの記事も泣いたわー。
「おかしくない?」のコメントへの回答 | Boiのねばネバダ

何度も言っているけれど、帰国子女への偏見がなくなってほしい、と切に願う。
故郷に安心して帰れないのは辛すぎる。紛争地域でもあるまいし。

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