アメリカ西海岸、シアトルのお隣ベルビューにいます

2019/04/17

海外赴任する駐在員とその家族の心の問題

日本は新元号も発表され、新年度を迎えた。
この春に海外へ赴任される方も多いと思う。

「海外生活楽しそう!」と前向きに家族が帯同してくるならいいが、配偶者が嫌がったり子供が嫌がったり、はたまた当の本人が嫌がったりするケースもある。

住んでみたら意外と良かった、というのであれば、ハッピーだし問題ない。
でも、いつまでもなじめずに日本に帰る日を指折り数える日々を過ごしたり、冒頭で言った「楽しそう!」と前向きだったにもかかわらず「こんなはずでは」の積み重ねで辛い日々を送ることになったりする人もいるかもしれない。

私の場合 - 誰からも必要とされない

独身の時はもちろんだけれど、結婚後出産後も1年間の産前・産後・育児休暇を除いて、ずっと働き続けていた。私の力量など大したことなかったし、収入もそこそこしかなかったけれど、私にとって仕事は大事だった。何より、自分の収入がある。
海外赴任が決まると、仕事はやめなければならなくなる。
渡米した後も、就労許可が下りるまで働くことはできない。そしてそれ以上に言葉の壁もある。しばらく自分の収入はあきらめなければならない。

渡米直後の私は本当に暗闇の中にいるようだった。
運転ができず、英語もできず、お金もない。
銀行口座を開設するまで、オットから定期的に現金をもらって生活していた。彼は何も考えていなかったと思うけれど、私にとっては屈辱的なことだった。
(銀行を開設しても、結局キャッシュカード兼デビッドカードが使えるようになるだけで、私の口座に入金してもらっているので、やっていることは同じなんだけど(笑))

自由になるお金がない、移動手段がない、これだけで十分ふさぎ込む理由になる。
でもそれ以上に何より、だれからも私を必要とされていないことが一番堪えた。仕事もないし、買い物ひとつできない。ただ息子と二人で部屋に閉じこもるだけ。当時は歩ける範囲にある公園なんて全然知らなかった。
9月になって子供が学校に通いだすと、案外周りに日本人がいることが分かって、そこからたくさんの情報を得られたけれど、それまでは穴倉で春になるのを待つクマのようだった。春が来ることも信じられなかった。

駐妻にまつわる悲しいニュースがあった

昨年9月、タイで駐在員の奥さまが自殺した、というニュースを覚えていらっしゃるだろうか。
4歳と3ヶ月の二人のお子さんを残しての自殺だったそうである。
聞いただけで、日本にいたとしてもうつ病になりそうな状況で、言葉もない。

駐在員とその家族に関係する心の問題を調べていると、いろいろなケースがあり、単身赴任すればよかったんじゃないかとかそんな単純な問題ではなかったろうことに気付く。
夫婦どちらにも言い分があり、どちらにも正義がある。

どこかで読んだ資料に、こんなケースがあった。
駐在員本人が一人では辛いから家族帯同を奥さんに懇願した。
奥さんはキャリアウーマンでバリバリと仕事をしていた。
仕方なく奥さんは仕事を辞め、小さいお子さん一人とともに帯同を決意。
ところが慣れない海外生活に加え、それまでバリキャリだったことの反動もあり、現地語もできない奥さんは次第にうつ状態に。
話し合った末、奥さんとお子さんだけ日本に帰ることに。
単身赴任となった旦那さんは、その後心身を病んでいく。

こういうケースを聞くと、タイの事件に関して、旦那さんのフォローが足りなかった、とか、奥さんもシッターさんでも雇えばよかったのに、とか、周りに相談できる人はいなかったのか、とか簡単には言えなくなってしまう。この場合、奥さんをフォローするだけでは解決には至らない。
そもそも、この家族には海外赴任そのものが合っていなかったのではないか、少なくともこのタイミング(小さいお子さんがいる状況)では無理だったのではないか。

胸が痛い。ただただ辛い。

自分の決断だから、というモヤモヤ

私も泣きながら「日本に帰りたい」とオットに訴えたこともあった。あの時、オットはどんな気持ちで聞いていたんだろうか。もし、私があのままうつ病になって自殺していたら、オットはどうしていただろう。

息子はともかく、私はそれでも「最終的には自分も納得して自分で決断して一緒に渡米した」という事実がある。それはそれでモヤモヤする。

当時の選択肢の中に、
  • 海外行きはあきらめる
というのもあった。

でもそれは同時に、彼の「海外で働いてみたい」という希望を挫くことにもなる。
それはさすがにかわいそうだ、と「海外で働く」という選択をした場合、家族には下記2択しかなくなる。
  • 単身で渡米してもらう
  • 家族全員で渡米する
この2択から「家族全員で渡米する。私は仕事を辞める」と決断したとしたら、やはりモヤモヤするのは当然だと思う。何しろ、彼の希望しか通っていないのだから。私はいろいろなことをあきらめて、彼の希望を実現させるための決断をしたということになる。人生の伴侶だからと言って、そこまで自分の人生を譲歩して賭けるほどの人間なのだろうか?そして彼は私がそこまでの決断をしてまで渡米をしたことに関して、どのように感じているのか?そして、彼一人に収入を頼ってしまうことによって、家族のメンタル面の責任も含め、プレッシャーになっていないかということも気になる(全く何も考えていないのであれば、それはそれでシバいてもいいのでは)。

まあ、それも「自分の決断でしょ」と言われればその通りである。

ああ…考えているだけで胸が苦しくなる。
私はいったい何のために渡米してきたのだろうか。

それでも何となくなじんだ

一つ言えるのは、たいていの人はどうにか海外生活と折り合いをつけていくということである。
でも、たとえなじめなかったとしても、それはその人に問題があるわけではない。合う・合わないは本人の努力ではどうにもならないからだ。どんなに努力しても、私は白人になれないのと根本のところはあまり変わらない。なじめないことで悩んでいる人がいたとしたら、少なくとも、それはあなたの努力が足りないからではないです。

この間、渡米5年という友達と話していた時、二人で共通していたのは
たまに日本に帰って、おいしいものを食べて、アメリカの悪口言うくらいがちょうどいい
ということだった。悪口言いつつも、住みやすいのはなぜでしょうか。シアトルだからかしら。
彼女も数年で日本に帰るつもりでいたらしいのだけれど、住んでみたら案外アメリカの方が楽で、しばらくこちらに住むことにした、と言っていた。わかる。

何のために渡米してきたかわからないけれど、学齢期の子供を育てたり、ぼんやり楽に過ごすには、アメリカ楽ちんでいいな、と思っている。
当面の目標は、息子が高校行ったら働きに出たいな、ということ。近所にそういうママ友がいらして、そうか、高校からでもイケるな!と思ったからなんだけど(単純)。それまでに英語なんとかする~

参考)
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