私の息子とは逆で、日本にいる日本語ネイティブではない子供たちの教育支援の話である。
アメリカのように昔から移民が多くいて、英語教育の歴史がわりと長い国でも苦労しているのに、日本ではもっと苦労が多いだろうことは容易に想像がつく。
そもそも日本語自体、確か文法は朝鮮、文字は中国、発音はハワイのミックスで、どの言語からもかけ離れていると聞いたことがある。
文字が三種類もあるんですよ?「てにをは」って難しくないですか?文法だって、かなりファジーだよね?
日本は、日本全国でほぼ均一の教育を受けられるという点で、本当に素晴らしいと思う。その内容の是非はあるにしても、教育機会は保証されている。あと地味にキツいのが源氏物語の葵上。平仮名六文字の中に子音がn一つという狂気。以前仲良くなったエジプト人留学生が、「葵上はとても発音しづらいです。私には「ah wow yeah」って聞こえます」って言ってて、「その人たぶん、そんなアメリカンなノリの人生じゃないぜ」って思った。— 東京女子大学日本文学専攻 (@twcu_nichibun) 2016年10月5日
アメリカは、住んでいる地域で受けられる教育の内容も質も異なる点で、ある意味不公平であると思う。
ただ、記事によれば、「教育の主体を日本国民」としていて、「外国籍の子どもが教育を受ける「権利」は認めている」とある。
「認めている」って。
日本って良くも悪くも「日本国民」だけが対象なんだよね。移民に関してはほとんど考慮されていない。潜在的差別と言っていいだろう。
「いい自治体にあたって大学まで出た子もいれば、小中学校の段階で門前払いだったという子もいて、たまたま住み着いた場所で驚くほどのバラツキがあるような事態は、先進諸国で他にないのでは。市民ではなく国民の教育にこだわっているのは、グローバル化著しいこの時代にそぐわない。政府は、外国人の子の義務教育化を本気になって考えるべきときだ」その点、アメリカは英語ができないからという理由で
「英語ができるようになってから来てください」
なんて門前払いされるようなことはない。また、そういう子どもが放置されることもない。
移民の立場から言えば、本当にありがたい。
(ただまあ...地域によっては学校がもっと難しい問題を抱えていて、英語ができない子にまで手が回らないところもあるとは思う。)
言葉ができない、その国の人と意思の疎通ができない、というのは社会的に存在していないのとほぼ同じなんじゃないかと思うことがある。
私はかろうじて日本人コミュニティの中に自分の居場所を見つけたけれど、1年前の息子のことを考えると涙が出るし、本当によく頑張ったなぁと頭が下がる思いである。
子どもがその国の言葉ができないままでいたら、やがて現地校に居場所はなくなる。
たとえその後会話に問題がなくなったとしても、学習言語としての日本語が身に付かなければ授業にはついていけなくなる。質問に答えられないのが、単純に学力の問題なのか、それとも言語の問題なのか、そこを取り違えると、その子の学力を伸ばすのは難しい。
その子の母国語で教育してくれる場所があればまだいいけれど、そうでなければ年齢相応の学力は身に付かない。言語も学力もどちらも中途半端であれば、その子の将来の可能性は狭まってしまう。
貧困や非行とも結びつきやすくなるだろう。
子供は現地校に放り込んでおけば、勝手に言語を獲得するもの、というのは妄想です。
ELLの先生も言っていたけれど、息子が現地校でなんとかやっていっているのは、日本語で年齢相応の学力を身に付けているからに他ならない。やっぱり補習校の存在は大きい。
日本語で理解できれば、英語でも理解できる。日本語でわからないものは、英語でもやっぱり理解できない。問題の切り分けは簡単だ。
そして、英語の上達も母語の発達がカギを握っている、と実感としてわかるようになってきた。
ただそうはいっても、土曜日がつぶれることにはデメリットも大きい。
日本語補習校は土曜日が潰れるから、サッカーだけでなく課外活動も英語環境の友達と過ごす時間も大幅に制限される。おまけに多くの子は塾にも行く。しかしある程度は日本語ができないと家族や親戚と意思疎通ができなくなる。子供の海外生活は意外と大変なのです。 https://t.co/QP5MEremtr— NYの会議通訳者が教える英語 (@YukoOhnaka) February 13, 2017
うーん、ちょっと極端な意見だなとは思う。もしかしたらニューヨーク近辺では、ここで言われているようなご家庭が平均的なのかもしれないけど。それから、アメリカで育てば英語なんて自然に覚えるとかいうのは大間違いで、学校が終わったら家庭教師に英語の補習をしてもらわないと、見よう見まねではいい加減な英語を覚えてしまいます。親が注意できないから。家庭教師の料金は、ヘタすると東京で私立に通えるぐらいしますよ。 https://t.co/d8kZEFpkSo— NYの会議通訳者が教える英語 (@YukoOhnaka) February 13, 2017
これもまた難しいところで、補習校へ行くと英語環境が制限される、でも裏を返せば日本語環境を確保できる、ということだ。どちらに重きを置くかは本人や周りの環境にもよる。
子供の性格とか親がどこまで日本語にこだわるかとか。
どちらにしても、アメリカで育てば英語が自然に身に付かないのと同様に、日本人家庭で日本語を使って生活していれば、日本語も自然に育つかというとそれも無理です。
日本人家庭で両親が英語が得意ではないというご家庭でも、子供が日本語を話さなくなったという話はよく聞く。別に特別な事情があったわけではない。
補習校を見ていてもそうだ。
補習校にがんばって通い続けていても、途中で日本語がわからなくなる子供がいるくらいだから。それは駐在で来ている日本人のご家庭にも起こりうることで。
日本ではアメリカのELLに当たるものがないので、移民の子どもたちの環境は厳しいだろうなと思う。加えて、補習校のようなものがあるわけではないし。たとえうまくいって日本語を習得できたとしても、ご両親が忙しくて(日本に稼ぎに来ているくらいだから)ろくに会話もなければ子供たちの母語は失われて家族で意思の疎通ができなくなってしまう。
本当に根は深い。
海外生活の長かった人で、大人になっても日本語も英語も(どちらかが不得意ということはあるにせよ)それなりに問題なく使えている人たちというのは、本人が努力しているケースがほとんどだと思う。本人は努力と思っていないかもしれないけれど、とにかく四六時中本を読んでいるとか。
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この記事最後のかつて支援されていた移民のお子さんの言葉には泣きました。
「教育は種まきのようなもので、すぐに利益の出るものではないし芽が出ないものもあるけれど、花が咲くこともある。私もこれから、教育のような人の役に立てることをしていきたいです」(2017-2-26追記)
思い込みで書きすぎてしまったので、関連記事も合わせてお読み下さい。
日本での日本語指導が必要な児童への教育支援 - テンパり母のアメリカで子育て
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