アメリカ西海岸、シアトルのお隣ベルビューにいます

2016/11/13

差別と教育 ~ 米大統領選から ~

トランプが当選した後いろいろ考えていて、書こうかどうしようかと思ったんだけど、やっぱり書こうと思います。

私の両親は、典型的な団塊世代であると言えばわかりやすいかもしれない。
高度経済成長を支えてきた世代で、ちょうど専業主婦と猛烈社員がマジョリティだった世代である。
だから、ちょっと取り扱いが難しい。

私が就職して、遅くまで働いて帰ってくると
「女の子がこんなに遅くまで働くなんて。だれかに仕事を代わってもらいなさい」
と平気で言っていたし、私が結婚して働いた時も
「よくだんなさまは許してくれたわね」
と言われた。
子供が生まれた後働きだした時も何を言われるかわからなかったので黙って働いていたのだけれど(いちいち報告する必要もないし)、それがバレた時も
「○○さん(実弟のお嫁さん)は、子供が3歳まではそばにいないとって言っていたのにねぇ」
と嫌味を言われた。

特に母は、私が小さいころから「韓国人も中国人も信用ならない」とか「黒人は気持ち悪い」、あげくに「大阪の人はお金に汚いから嫌だ」と吹聴してはばからなかった。
個人の思想なので、母が何を考えていようがそれは本人の問題ではあるんだけど、それを子供にためらいもなく言う神経は、今にして思うと、まったく大人げなかったと思う。
子供にとって親はすべてだから、そんなことを子供に言い続けていたら、子供だってその思想を植え込まれてしまう。

幸い、私は母と違って本が大好きだった。
本の中には黒人も白人も貧乏も金持ちも、いろんな人が出てきた。白人で金持ちで悪い人もいれば、貧乏な黒人が正義感を持って勇敢に戦う話もあった。

それから、中高で出会った社会の先生が、たまたま良かったということもある。
彼らの話は面白かった。よく授業内容を脱線して、太平洋戦争以降の話や冷戦状態の米露関係やらいろいろしてくれた。

大学は教育学部に入ったが、結局社会学が面白くて教育社会学で学位を取った。
社会学の講師たちはフィールドワークが得意で、質問紙を配ってそれを統計化し、データから現在の社会を見るということをしていたので、少なくとも自分の考えをこちらに押し付けてくるような先生はいなかった。

今の自分の原点は、家の外にあった、こういった小さな幸運の積み重ね、と思う。

母が中国人や韓国人を嫌ったりするのは、彼女がほとんど東京から出ず、本も読まず、ただひたすらワイドショーを見ながら過ごしてきたからなんだろう。専業主婦で自分でお金を稼いだ経験もほとんどなく、友だちと言えば学生時代の友だちやママ友という狭い交友関係の中で生活してきたことも一つの理由であるだろうと思う。
もし、私が本が好きじゃなくて、学校の勉強もぜんぜん興味がなく、家を出ることもなくずっと実家暮らしで、休みの日は家で母とずっとしゃべり倒すだけの毎日を過ごしていたら、私も「中国・韓国人は嫌いだ」と平然と言っていたかもしれない。

だから、今回、トランプがじわじわと支持を広げていったのもわかるような気がする。
わかりやすく過激なことを言っている人は、ワイドショー受けはいい。しかも、トランプを取り巻く親族のきらびやかなこと!(改めて映像で見て、感じた)テレビ映りの良さはこの上ない。
テレビの影響力は落ちてきたとはいえ、まだまだ多くの国民は、とくにマジョリティである中高年の多くのニュースソースはまだまだテレビだと思う。私の両親と同じように。

トランプも「移民を追放したいわけじゃない、追放したいのは不法移民だ」と言っているけれど、多くの人はそんなことはどうでもいいんだと思う。常々気に入らなかった人を「嫌いだ」と公に言える「お墨付き」をもらってしまったに違いない。そして、今までのうっ憤を晴らしているんじゃないだろうか。
太平洋戦争中の日本かと思うよね。
言語ってアイデンティティと密接に結びついているから、母語を奪うのは、個人のアイデンティティを殺すことになってしまう。

***

前回も書いたけれど、さまざまな人と交流すること、さまざまな経験をすること、その一番手っ取り早い方法が教育なんじゃないかと思います。
10代でバックパッカーになって世界中を見てきて、その後海外ボランティアに、みたいな経験はだれにでもできるわけじゃないから。まあ、そもそも10代でバックパッカーになろう、と思った時点で、すでにその人には何かが見えているんじゃないかと思うけど。

ただこれも、貧困と教育は強い相関があるので、一筋縄ではいかないですよね。
データえっせい: 貧困と学力の相関(都内23区)
これこそ負のスパイラル。

少子化対策もそうだけど、人を育てるのは、国家として最重要課題なんじゃないかと思うんだけどな。貧困を断ち切るのは、個人のがんばりだけではどうにもならない。

2 件のコメント:

  1. くまごろう2016/11/16 9:57

    たまこさん、はじめまして。ワシントン州の田舎町に住んでるクマゴロウと申します。大統領選の結果を受けて、都会の様子が知りたくてブログを検索していたところ、たまこさんのブログにたどり着きました。私にもキンダーの息子がいるので、学校の話を興味深く拝見しました。やはり多国籍のシアトル近辺はすごいな!と。Jトークでしたっけ?この辺は学年に数人アメリカ人(それもみんな白人)以外の子供がいるかいないかって感じなので、うらやましいです。またのぞきに伺いますね!

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    1. くまごろうさん、

      はじめまして。コメントありがとうございます。
      この辺は、IT企業も多いですし、日系の企業も多く進出しているせいか、日本人(だけでなく、アジア系)がたくさんいます。ELLの生徒もとてもたくさんいます。ありがたいです。
      でも、車で少し走らせるだけで、アジア人なんかぜんぜん見かけなくなります。
      やっぱりこの辺は特殊なんだろうなと思っています。

      だらだらと更新しているだけですが、よろしければまたいらしてください!

      たまこ拝

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