アメリカ西海岸、シアトルのお隣ベルビューにいます

2018/10/03

ベルビュー学区でのギフテッドプログラム

息子のスイミングレッスンに行ったところ、私と息子が日本に帰っていた7月に引っ越しをしていなくなっていた元同じアパート在住母娘さんとばったり出会った。

どこに引っ越したの?急にいなくなっていてびっくりしたよー。
7月にxxアパートに引っ越したの。(注: 同じ学区内のアパート)
あれ?じゃあ同じ学校?
ううん、違うの…(恥ずかしそうに)xxに通っているの…
はっ!もしかしてギフテッド?すごいーおめでとう~

まさかギフテッドだったとは。
ロサンゼルスから1年前にベルビューに来たご家族だったので、娘さんはすでに英語堪能だったんだけど、それにしてもすごい。お母さんは小さくてきれいでフレンドリーだし、お父さんは頭よさそうで好青年だし、なんだよ、世の中不公平だよ!
(日本人ではないです。)

その後も、友達との間でギフテッドが話題に上ったりして、私も適当な知識で適当なことを話していたんだけど、この際だからBSD (Bellevue School District) ではどんなプログラムがあるのか調べてみた。
どうせうちには関係ないし、と思って全然考えてもいなかったんだけど、なかなか面白い情報が得られた。

BSD では公式には "Gifted" とは呼ばない

ベルビュー学区では、ギフテッドに当たるサービスを "Advanced Learning Services" と呼ぶことにした、と発表していた。
Gifted Program Becomes Advanced Learning Services – Bellevue School District

このサービスは、調べてみると「優秀な子をもっと伸ばす」みたいな単純なものでもなかった。だから "Gifted" は陳腐化してしまったということだったのかもしれない。
あと、「ギフテッド」という呼び名に関しては、アメリカ国内で今までずいぶんと議論されてきたみたいで、それも考慮したのかもしれない。

Advanced Learning Services とは

Advanced Learning Services – Bellevue School District

お子さんはこんなタイプですか?

もし、下記のような傾向が認められる場合、ギフテッドのテストを検討してもいいかもしれません。
言語能力: 語彙が同年代の子供に比べて多く、しゃべり続ける、または質問し続ける
思考能力: 想像力が高く、問題に対して興味深い解決法を考え付く
学習態度: 目から鼻に抜けるタイプで、より難しい問題を求める
モチベーション: ある特定のトピックに執着を示し、細かい指示を嫌がる
社会性/情緒: 他人の感情に敏感であり、公平性を気に掛ける。完璧主義だったり年上や大人との関係を好む。
読書: 多読。学年レベル以上の読み物を読んだり、早い年齢から読んでいる
算数: 算数に強い興味を持つ。学年以上の問題を解いたり早い年齢で数字に興味を持つ
この説明を見る限り、単純に「優秀な生徒」だけをターゲットにしていないことがわかる。現状はともかく。
要は、通常の授業では収まり切れないタイプの子供が対象ということなのではないだろうか。

提供されるサービス

サービスには、学年やその内容で大きく分けて4種類ある。
Services We Provide – Bellevue School District
[Kindergarten & First Grade]
キンダーおよび1年生は、通常の授業内でより高いレベル、もしくはもっと深い学習の機会が与えられる。ギフテッドのクラスはない。
※詳細をちゃんと読んでいないのだけれど、STARテストなどで高い点数を取り、 "most highly capable" として認められた生徒のことらしい。
[Domain-Specific Services (Grade 2)]
下記学習面において能力があるとされる生徒(ある分野に突出した能力があると思われる生徒)。
Literacy
Math
Nonverbal
これも、通常のクラスの中で提供される。
[Differentiated Services (Grade 2-12)]
学習面で優れており、情緒面でのサポートを必要とする生徒。
生徒の特質に合わせて教授法を検討するが、これも通常の学校の通常の授業の中で行われる。
[Self-Contained Services (Grades 2 – 5)]
全日制のギフテッド。
同等のレベルの生徒たちと学ぶ。同じようなレベルの生徒同士で学ぶことによって、さらなる成長が認められる。

ギフテッドは単純に学力だけではない

いわゆる「ギフテッド」は4つ目の "Self-Contained Services" に当たる。
ギフテッドクラスを提供している学校の、ギフテッドのクラスに入って、ギフテッドに囲まれて勉強するわけだ。
残りの3つは、どのように実施されているのか実態がさっぱりわからない。実際にこのサービスを受けている生徒はどれくらいいるのだろうか?通常授業の中で行われる、と言われてしまうと、顕在化しにくい。

こうやってまとめてみると、本当に、決して単純に「優秀」という理由だけのサービスではないということがよくわかる。
ただもちろん、絵に描いた餅である可能性もあって、実際にはパブリックな有名塾みたいな感じになっているかもしれない。「ギフテッド」に入れるために、子供に家庭教師をつけている人の話をよく聞くし、参考書まであるそうだし…全部うわさで聞いただけだけど…

こういうこともあって、うまくギフテッドプログラムが働かなくて、しかも予算も削られたりして、近年ではこのサービスのない学区もあるそうである。
さすがベルビュー。予算もあるし需要もある。

でも、本来はがんばって勉強して何とか入る、という生徒はターゲットではなく、あくまで「通常授業が何らかの理由で辛い」という生徒のためのプログラムだ、ということである。
基本的には何かが突出して優秀な生徒のためのプログラムではあるんだけど、それに加えて、集団生活になじめなかったり、先生のインストラクションに従うことができなかったり、あるいは授業が簡単すぎてつまらなかったり、とにかくその生徒にとって通常の授業がマイナスになってしまうようなことが懸念される場合、検討する必要がある、というプログラムのはずである。

だから、「うちの子もギフテッドに入れないと体裁が悪い」みたいな理由で無理やり子供をねじ込もうとする保護者の話とか、受験に慣れ親しんでいるアジアンが多くなってその他の人種の生徒がいづらくなって辞めちゃうとか、そのせいで本当に必要な生徒が入れないとか、噂だけど、聞くと、そのせいでギフテッドプログラムがどんどん縮小されてしまうんだよ、と思ってしまうわけだけど、テストで選考しているうちはどうしてもそうなってしまうのはやむを得ないのかなー、とは思いました。

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