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2019/05/20

保育園児死亡交通事故によせて

この事件が、とても話題になっていました。
保育園児らの列に車突っ込む 園児4人が重体 大津 | NHKニュース

死亡した園児のご冥福、それから心身ともに傷を負った園児たち、保育士のみなさん、園長はじめその保育園の関係者の方々、そして保護者の方々へのサポートがじゅうぶんになされますように。

私もかつての保育園児の母である。関心を持たずにいられない。

交通事故は誰しもが被害者になりうるし、誰しもが加害者になりうる。
自分が加害者にならないように、どんなに細心の注意をしたとしても、今回の事件のように、対向車の不注意で自分が加害者になってしまうことだってある。

この事件を受けて、言葉にならない複雑な心境になった。

もしも自分が

死亡した園児の保護者だった場合

おそらく、なぜ自分は保育園に行かせてしまったんだろう、と自分を責めたと思う。

もし、あの日熱を出していたら
もし、あの日お休みさせていたら
そもそも自分が働いていなければ

それが落ち着いた頃、今度は残念ながら、保育士さんの判断に疑念を抱き始めるかもしれない。

もし、お散歩コースを変えていたら
もし、あと10分時間がずれていたら

その後は、事故を起こしたドライバーを責めるかもしれない。

誰かを責めずにはいられないだろう。
そして、後悔ばかりをして過ごすに違いない。
あの子が死んだ時間、私は同僚とおしゃべりして笑っていた、コーヒー飲んで休憩していた、真剣に仕事すらしていなかった、そんな今やらなくていいことをしていたんだったら、あの時なぜあの子のそばにいてやらなかったんだ…

現場にいた保育士だった場合

保育士さんも辛いだろうと思う。
園児の安全を一番に確保しなければならなかった大人が、子供の命を守ることができなかったのだ。

もしあの時、もう少し早く異常に気付いていたら
もし、お散歩コースを変えていたら
もし、もう少しみんなのお支度を早くさせていたら
もし、もう少しゆっくり歩いていたら

たくさんの「もし」の中で、後悔でいっぱいになると思う。
でも、どんなに後悔しても、時間は巻き戻らない。罪の意識が完全に消える日は来ないかもしれない。

全国の保育園関係者にとっても

保育園からお散歩の時間が消えるかも、と懸念する声もたくさん聞かれた。実際、「そんなに無理して散歩に出る必要ないのでは」とか「園庭のない保育園には通わせられない」などの、今回の事件の余波もあった。

ニュースだけでも心が痛むのに、保護者に「気を付けてくださいね」などと冷たく念押しされたら、ギリギリのところでなんとか食いとどまっていた心がぽっきり折れてしまう。

報道について

でも、もしあの時、園児の代わりに保育士の誰かが亡くなっていたとしたら。
おそらく、残念ながら、その保育士さんを英雄として美談になっていたのではないかと思うのだ。子供たちの安全を守るために、自分の命を懸けた、大変正義感の強い人物でした、と。
この結末だったら良かったのだろうか?
でも、結局、被害者家族は生まれるし、何も変わらない。美談にされても生き返らない。やっぱり、たくさんの後悔が生まれるだろう。

交通死亡事故について

報道を見ていて、なぜこの交通事故ばかり大きく報道されるのか、という疑問が生じた。
警察が「交通安全運動」を定期的に行って、小学校でも出張安全指導もして、さまざまな形で啓もう活動しているにもかかわらず、それでも根絶できない交通事故。
実際のところ、年齢別の死亡事故件数はどれくらいにのぼるのだろうか。

総務省統計局が e-stat という統計ポータルサイトを持っていて、そこにも交通事故に関する統計データがあった。すごい。便利。
年齢層別死者数の推移 | 統計表・グラフ表示 | 政府統計の総合窓口
数字だけだとわかりづらいので、これをダウンロードして、見たい形のグラフにしてみた。
2005年~2017年までしかないけれど、傾向はよくわかる。
交通事故の死亡事故に限って言えば、半数以上が65歳以上だ。自分で運転中に事故を起こして死亡したケースもあるだろう。警視庁のサイトも見たけれど、交通安全活動でもっとも力を入れているのは65歳以上にどうやって啓もう活動していくかに焦点が置かれていた。
今回の事件で被害にあった保育園児は4歳以下であり、当たり前だけれど本人が運転して起こした事故はありえないので、すべてもらい事故であろう。統計資料によれば、4歳以下の死亡事故は、2006年の48人が最多で、最新の2017年には半数以下の23人となっている。80~84歳が同年454人も亡くなっていることと比較すると、かなり少ない。だから、余計事件として目立ってしまったのかもしれない。
ただ、高齢者の人口が多いことを勘案すると、母数が多い分、事故に遭う人数も多くなるだろう。
この差を是正するためにか、統計資料には、10万人当たりの死亡事故数というデータもあった。これなら、総人口が異なっていても、母数が10万人で揃っているので検証しやすい。
10歳未満は、10万人当たり一人いるかいないかだというのに、65歳以上となると30人以上である。
確かに、子供の交通事故死はまれで目立つのだろう。
逆に言えば、子供たちは周りから守られていると言ってもいいと思う。周りが危険回避のために努力しているのに違いない。

数字にならない安全

これだけ守られているにもかかわらず、お迎え時に保育士さんに
「ニュースご存知ですか?気を付けてくださいね」
という人の神経が私にはわからない。
親と一緒に公園まで歩いていく途中で事故に遭う可能性だってないわけではない。その時、その途中の道は本当に安全なのか、危険なところはないか、何かあった時はどうするか、といったことを事前にチェックしてから遊びに行く保護者がどれだけいるだろう?

ここまで書いておいてナンだけど、今回の事件は大きく取り上げられて、保育園がさらし者にされてとても不愉快だった。でも、おそらく、その陰でたくさんの事件にならなかった、未然に防がれた交通事故があったはずだと思うのだ。未然に防がれた事故は、数字として挙がってこない。誰にも気づかれることはない。
気付かれることのない先生方の努力のおかげで、朝送り出した子供がそのままの状態で帰ってこられるのだ。

余談ですが

交通事故でお子さんを亡くされた方、ということで風見しんごさんのことを思い出した。
事故後にテレビに復帰した時は、良かったな、と思ったけれど、実際にはもっとつらかったのだな、とこれらを読んで初めて知った。
泣かない息子を産んだ妻…風見しんごが明かす亡き2人の子への思い (1/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)
早川勝メール【573号】幼い娘がトラックの下で血まみれに…そのとき、あなたは?

そして、心折れることなく、交通安全運動に精力的に参加されて、当時の辛い思い出も講演したりして、有名人としての役割を存分に果たしているように思った。並大抵の精神力じゃない。

事例をたくさん読めば読むほど、たいていはドライバー側に問題があることがわかる。ふつうに道を歩いていて事故に遭ったとして、たとえそれが保育園児のお散歩だったとしても、歩行者に非はない。交通ルールに従って、歩道を歩いていただけなのだ。故意に飛び出したりしない限り。

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